素材中の無音区間を解析し、SILENCEとして扱います。無音を削除して時間軸を詰めるのではなく、元の位置を保持したままミュートします。
前処理を速くするだけではなく、
後工程まで速くする。
Vocal Prep 0.1.8の詳細説明と操作マニュアルです。Studio One 7 ProfessionalではARA Event FXとして実機確認しています。
Vocal Prepとは
Vocal Prepは、ボーカル素材に含まれる無音、ブレス、歌唱区間、タイミング、入力レベル差を解析し、後工程へ渡せる状態へ整理するツールです。
目的は、歌唱表現を自動で決めることではありません。大量に繰り返される機械的な処理をまとめ、人間が確認すべき例外と表現判断だけを残すことです。
素材に対して行うこと
SILENCE、BREATH、SINGING、UNKNOWNの区間を解析します。自動判定は確定事項ではなく、ProposalとしてPreviewとManual Correctionで確認できます。
Singingのアタックを基準に設定範囲内でタイミングを整理します。関連するBreathはSingingに追従し、再帰的に後続リージョンを押し出す設計ではありません。
コンプレッサーのように波形を圧縮するのではなく、素材・リージョン側の入力レベル差を先に整えます。
Section未指定時は曲全体をSection Aとして扱います。0.1.8ではSection B/Cを手動編集する最終UIは未提供で、現行UIで利用できる範囲を超えて操作する必要はありません。
元素材を直接書き換えずに解析・Previewを行います。確認後にConfirmし、Studio One側のBounceで音声素材として確定できます。
なぜ後段処理まで減るのか
素材ごとの入力レベル差が残ったままCompへ入ると、リージョンによってThresholdへの当たり方やGain Reductionが変化します。そこでCompを調整すると、EQやSaturationの反応まで変わり、再調整が連鎖します。
Vocal Prepは、圧縮の前に素材・リージョン側の入力レベル差を整理します。その結果、後段Compへ入る条件が安定し、ThresholdやGain Reductionの調整量が減ります。EQやSaturationも、入力条件が揃った状態から始められます。
Studio One 7での基本操作
- Audio EventへVocal PrepをARA Event FXとして追加
処理対象のボーカルAudio Eventを選択し、Vocal PrepをEvent FXとして読み込みます。プラグイン右下に「ARA」と表示されることを確認してください。「Capture」と表示される場合は通常Insertとして読み込まれています。
- Analyze / Proposalを生成
ARA取得後に解析が走り、無音、ブレス/歌唱区間、タイミング、レベルの候補がProposalとして生成されます。再解析したい場合はAnalyzeを押します。
- 解析結果を確認
波形とRegion表示、右下のRegion / Phrase数を確認します。イベント間の空白は時間軸上の空白として残ります。
- Preview
PreviewをONにし、元素材を直接変更せず提案結果を試聴します。タイミングずれ、クリック、瞬間的な音量低下、二重に聞こえる箇所がないか確認します。
- 必要箇所だけManual Correction
Regionを選択し、分類、境界、Timing、Gainの必要箇所だけを修正します。Timing Enabled / Gain Enabledで個別の処理対象から外すこともできます。
- Confirm
Previewで確認できたProposalをConfirmし、編集内容を確定状態へ移します。
- PreviewをOFFにしてBounce
Confirm後はPreviewをOFFにし、Studio One側でBounceします。確定編集がBounce結果にも残ることを確認して次工程へ進みます。
Timing Strengthの調整
Timing Strengthは素材ごとに最適値が変わります。0.1.8の実機確認素材では約30%付近で安定動作を確認しましたが、これは固定推奨値ではありません。
通常Insertで使う場合
通常VST3 Insertとして読み込むと右下は「Capture」表示になります。このモードでは再生音を取り込んでからAnalyze / Previewします。Studio One 7ではトラック全体を直接取得できるARA Event FX運用を推奨します。
Captureをやり直す場合はClearでCapture、Preview、Sessionをリセットしてから再取得してください。
自動処理が合わなかった場合
解析結果はProposalです。Previewで意図と異なる箇所があれば、その部分だけManual Correctionで変更してください。素材全体を最初から手作業でやり直す必要はありません。
Vocal Prepが担当しない処理
これらは前処理の後で、人間が素材と作品に合わせて決める領域です。Vocal Prepは、その判断を安定した素材から始められる状態を作ります。
2本の役割分担
素材そのものを整理する。
整理された素材を、後段処理しやすい作業規格へ収束させる。
芸術ではない手作業を剥がして、
人間には表現判断だけを残す。
Vocal Prepは、自動化によって判断権を奪う道具ではありません。大量処理は機械に任せ、人間は例外と表現判断だけを見る。そのための前処理環境です。